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中国のIT大手Baidu(百度)は2026年11月5日、AIモデル「ERNIE-5.5-Flash-Base」の重み(モデルの中身のデータ)をHugging Faceで公開しました。事前学習(大量の文章から言葉の知識を身につける最初の学習)を終えた時点のモデルで、質問に答えたり指示に従ったりするための調整はしていません。Baiduは、開発者が大規模な事前学習の費用をかけずに、自分の分野や目的に合わせた追加学習を始められる土台として公開したと説明しています。
基盤モデルとは
ChatGPTのようなAIアシスタントは、事前学習の後に、指示に従う調整や強化学習といった追加の学習を重ねて作られます。ERNIE-5.5-Flash-Baseは、その手前の段階のモデルです。そのままでは会話に向かず、文章の続きを書く形で動きます。
Baiduは、この形で公開する利点として次の点を挙げています。
- 特定の分野に合わせた調整、推論やエージェントの訓練を、開発者が自由に選べる
- 学習の手法を比べる研究で、共通の出発点として使える
指示に従うよう調整した「ERNIE 5.5 Flash」は、後日公開するとしています。
仕組みと規模
ERNIE-5.5-Flash-Baseは、多数の小さな専門部品(エキスパート)から必要なものだけを選んで動かす「MoE」と呼ばれる構成です。
- 総パラメーター:2,800億(1トークンあたり動くのは140億)
- 学習データ:33.5兆トークン
- 一度に扱える文章の量:学習時は最大12万8,000トークン、追加学習と利用時は100万トークン
- 重みの形式:FP8とBF16の2種類
43の層のうち37の層は、遠くの文章を128分の1に圧縮して参照し、残る6つの層だけが全体を細かく見る設計です。こうして、長い文章を扱うときの計算量とメモリーを抑えています。学習データでは、ソフトウェアのリポジトリ全体を理解するためのコードや、長い文章の理解を重視したとしています。
性能
Baiduは、同じくらいの規模で重みが公開されている基盤モデルの、DeepSeek-V4-Flash-Base、TencentのHy3-preview-Base、XiaomiのMiMo-V2.5-Baseと、同じ条件で比べた結果を公表しました。いずれもBaidu自身の評価です。
- 幅広い知識を問うMMLU-Pro:78.4(DeepSeekは69.2、Tencentは66.9、Xiaomiは65.7)
- プログラミングのLiveCodeBench:40.1(同31.9、33.5、32.4)
- 大学院レベルの理科の問題GPQA:60.2(同55.9、50.2、51.4)
多くの評価で4つのモデルの中で最も高い成績でしたが、中国語の知識、長い文章、コードや推論の一部などでは、DeepSeekやTencentなどのモデルが上回った項目もあります。
ライセンスと使える地域
ライセンスはBaidu独自の「ERNIE 5.5 Flash Base Model License Agreement v1.0」です。主な条件は次のとおりです。
- 研究や教育、個人での試用などの非商用の利用:無料
- 関連する製品やサービスの年間売上が5,000万ドル以下の商用利用:無料。ただし、Baiduへの1回の利用通知と「Powered by ERNIE」の表示が必要
- 年間売上が5,000万ドルを超える商用利用:Baiduの書面での許可が必要
- このモデルやその出力を、ほかのAIモデルの改良に使うことは禁止
また、ライセンスが認める地域は「EU、英国、韓国を除く全世界」とされています。日本は対象に含まれますが、EU、英国、韓国では、このライセンスによる利用は認められていません。
CoAI編集部の視点
中国の主要企業は、完成したAIアシスタントだけでなく、その手前の基盤モデルの重みも相次いで公開しています。今回の比較の相手もDeepSeek、Tencent、Xiaomiの基盤モデルで、追加学習の土台をめぐる競争が中国勢のあいだで進んでいることがわかります。
一方で、基盤モデルはそのままではチャットに使えず、追加学習の知識と計算の設備が必要です。一般の利用者向けではなく、自社向けのモデルを作りたい企業や研究者向けの公開です。Apache 2.0などの一般的なオープンソースのライセンスと違い、地域の制限、売上の基準、ほかのモデルの改良への利用の禁止といった条件があるため、使う前にライセンスの全文を確かめましょう。
