
ElevenLabs、AI音楽生成モデル『Eleven Music』をローンチ – 音楽業界との協業で権利者保護を実現
AIオーディオ技術のリーディングカンパニーであるElevenLabs(本社:米国ニューヨーク州、CEO:Mati Staniszewski)は8月5日、新たなAI音楽生成サービス『Eleven Music』のローンチを発表しました。同社が音声AI技術から音楽生成分野へと本格進出を果たす画期的なサービスとなります。
自然言語プロンプトでスタジオ品質の楽曲を生成
『Eleven Music』は、ユーザーが自然言語のプロンプトを入力するだけで、スタジオ品質の音楽を数分で生成できるAIサービスです。ジャンル、スタイル、長さを問わず、ボーカルの有無も選択可能で、英語、スペイン語、ドイツ語、日本語を含む多言語での作詞作曲に対応しています。
例えば「60年代のスムースジャズで力強い歌詞、でも金曜日の午後にリラックスできるような」といった具体的なプロンプトを入力すると、AIが完全な楽曲を自動生成します。生成された楽曲は映画、テレビ番組、ビデオゲーム、アプリなど幅広い用途で商用利用が可能です。
音楽業界との革新的ライセンス契約
『Eleven Music』の最大の特徴は、音楽業界との包括的なライセンス契約により権利者保護を実現している点です。ElevenLabsは世界の大手インディーズレーベルとの契約を代理するMerlin Network、および世界最大級の独立系音楽出版会社Kobalt Music Groupと戦略的パートナーシップを締結しました。
これらの提携により、MerlinとKobaltが代表するアーティストやソングライターは、AI学習データの提供に対してロイヤリティを受け取ることができ、知的財産権の保護と新たな収益機会の両立を実現しています。参加は任意制となっており、権利者が自ら選択して参加する仕組みとなっています。
業界関係者からの高い評価
MerlinのCEOであるJeremy Sirota氏は「この提携により、音楽権利者がAI企業と新たな関係性を築けることを世界に示すことができました。ElevenLabsと協力し、AI企業と音楽権利者の共存・協業のための責任あるセーフガードを構築しました」とコメントしています。
Kobalt CEOのLaurent Hubert氏も「音楽の権利を持つ人から直接データを調達し、その権利を保護しながらサービスを発展させていく大変画期的なパートナーシップ」と評価し、「ElevenLabsが新たな音楽ライセンス提供の先駆者となることを嬉しく思います」と述べています。
SunoやUdioとの差別化要因
AI音楽生成分野では、SunoやUdioなどの競合サービスが存在しますが、これらのサービスは全米レコード工業会(RIAA)から著作権素材を無許可で学習に使用したとして訴訟を起こされています。一方、ElevenLabsは事前に権利者との合意を得た「完全ライセンス対応」のサービスとして差別化を図っています。
ElevenLabsのCEO兼共同創設者Mati Staniszewski氏は「AIオーディオ企業として音楽分野への進出は自然な流れでした。音楽業界のパートナーと協力してAIイノベーションの可能性を実現できたことを大変嬉しく思っています」とコメントしています。
今後の展開と上位版サービス
現在提供されている基本版に加えて、ElevenLabsは今後数週間から数カ月以内に上位版『Eleven Music Pro』のリリースを予定しています。Pro版では、MerlinとKobaltのパートナーシップを通じて参加を選択したアーティストやソングライターの作品を学習データとして活用し、より高品質な音楽生成を実現する予定です。
また、同社は開発者向けのAPIも近日中にリリース予定で、ユーザーがEleven Musicを直接アプリケーションやワークフローに統合できるようになる予定です。
音楽業界における新たな標準の確立
ElevenLabsは2022年の設立以来、AIオーディオ研究・技術分野のグローバルリーダーとして成長を続け、現在は数百万の個人ユーザーとFortune 500企業の72%以上を含む数千の企業にサービスを提供しています。今回の『Eleven Music』ローンチにより、同社のAIオーディオプラットフォームは音楽生成分野への本格参入を果たし、音楽業界におけるAI活用の新たな標準となることが期待されます。
『Eleven Music』は現在、ElevenLabsの公式サイトで利用可能となっており、基本プランでは無料での利用も可能です。ただし、無料プランおよび低価格プランでは使用量と商用ライセンスに制限があります。