
Google のAIコーディングエージェント「Jules」が正式版に – 非同期でコード修正・機能追加を自動実行
Google が開発したAIコーディングエージェント「Jules(ジュールズ)」が2025年8月6日、ベータ版を卒業し正式版として提供開始されました。Gemini 2.5 Proを搭載したJulesは、従来のコード補完ツールとは異なり、開発者の指示に基づいて自律的にコードの修正や機能追加を実行する画期的なツールです。
非同期で動作する革新的なコーディングエージェント
Julesの最大の特徴は、非同期で動作することです。開発者がタスクを指示すると、JulesはGoogleクラウドの仮想マシン上でコードベースをクローンし、バックグラウンドで作業を進めます。開発者は他の作業に集中でき、完了後にJulesが実行した変更内容を確認できます。
これまでのAIコーディングツールは主に同期的に動作し、開発者がその場で出力を確認する必要がありました。しかしJulesは「まるで追加の手のように動作し、基本的にタスクを開始すれば、コンピューターを閉じて立ち去ることも可能で、数時間後に戻ってくればJulesがタスクを完了している」と、Googleの製品ディレクターであるキャシー・コレベック氏は説明しています。
ベータ版での実績と新機能
5月の公開ベータ開始以降、世界中の数千人の開発者が数万のタスクに取り組み、14万件以上のコード改善が公開されました。この期間中にユーザーフィードバックを受けて、ユーザーインターface の改良、数百のバグ修正、新機能の追加が行われました。
- 以前の設定の再利用: 新しいタスクの実行速度を向上
- GitHub Issues統合: より seamlessな開発ワークフローを実現
- マルチモーダルサポート: ビジュアル出力の表示に対応
- プルリクエスト機能: コード変更を自動的にパッケージ化してプルリクエストを生成
新しい料金体系とアクセスプラン
正式版では構造化された料金体系が導入されました。無料の「入門アクセス」プランでは1日15タスク、同時実行3タスクまでが利用可能です。従来のベータ版では1日60タスクまでの制限でしたが、実際の使用パターンの分析に基づいて調整されました。
- Google AI Pro(月額19.99ドル): 5倍高い制限
- Google AI Ultra(月額124.99ドル): 20倍高い制限
プライバシーとセキュリティへの配慮
Julesはプライバシーを重視した設計となっており、プライベートリポジトリのデータはAIの訓練に使用されません。パブリックリポジトリの場合のみ、そのデータが訓練に使われる可能性があります。Google は今回、この点についてより明確な説明をプライバシーポリシーに追加しました。
今後の展開
Googleは既に社内プロジェクトでJulesを活用しており、今後「より多くのプロジェクト」での利用を拡大する計画です。また、ベータ期間中にモバイルデバイスからのアクセスが45%を占めたことを受け、モバイル向け機能の強化も検討されています。
Julesの正式版提供開始により、AIによるコード開発支援は新たな段階に入ったと言えるでしょう。従来の「補完」から「自律実行」へのパラダイムシフトが、ソフトウェア開発の現場にどのような変化をもたらすか注目されます。