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MIT調査:企業の生成AI導入、95%が失敗 – 約5兆円の投資も成果上がらず

2025年8月19日 CoAI編集部

米マサチューセッツ工科大学(MIT)の最新調査で、企業による生成AI導入プロジェクトの95%が失敗に終わっていることが分かりました。

わずか5%のみが収益向上を実現

MITのNANDAイニシアチブが発表した報告書「GenAI Divide: State of AI in Business 2025」によると、企業の生成AI導入において、急速な収益増加を達成できたのは試験的なプログラムのわずか5%にとどまり、大多数のプロジェクトが停滞し、業績への目に見える効果をほとんど上げていないことが判明しました。

調査は企業幹部150人へのインタビュー、従業員350人への調査、300の公開AI導入事例の分析をもとに実施されました。

350~400億ドルの投資がほぼ無駄に

米国企業はこれまでに生成AI関連事業に350~400億ドル(約5兆2000億円)を投じましたが、投資に見合う成果はほとんど得られていないという厳しい現実が明らかになりました。

報告書の主執筆者アディティヤ・チャラパリー氏は「一部の大企業のパイロット事業と若いスタートアップが生成AIで優れた成果を上げている」と述べ、成功例として「19歳や20歳が率いるスタートアップでは、1年間で売上高をゼロから2000万ドルまで伸ばした例もある」と紹介しています。

失敗の根本原因は「学習の壁」

調査によると、失敗の主因はAIモデル自体の性能不足ではなく、ツールと組織の間にある「学習の壁」にあります。経営陣は規制やモデル性能を問題視することが多いものの、MIT側は企業での統合プロセスに欠陥があると指摘しています。

ChatGPTのような汎用ツールは柔軟性により個人利用では高い効果を発揮するものの、企業の業務フローから学習して適応する機能がないため、組織での活用では行き詰まりやすいと説明されています。

購入か自社開発か:成功率に明確な差

AI導入手法についても興味深い結果が出ています。専門ベンダーからの購入とパートナーシップによる導入は約67%の成功率を示したのに対し、自社開発による構築では成功率が3分の1程度にとどまりました。

この知見は、2025年に独自の生成AIシステム構築を進める金融業界などの規制業界にとって特に重要な意味を持つとされています。

予算配分にも課題

データからは予算配分の問題も浮かび上がっています。生成AI予算の半分以上が営業・マーケティング分野に投じられている一方、MITの調査では最も高い投資収益率(ROI)が得られるのはバックオフィス業務の自動化であることが分かりました。具体的には、業務プロセス外注の削減、外部委託費用の圧縮、業務効率化などが挙げられます。

雇用への影響は既に現実に

労働市場への影響は既に始まっており、特にカスタマーサポートや事務職で顕著に表れています。企業は大規模なリストラではなく、退職者の補充を見送る形で人員調整を進めています。変化は主に、従来から価値が低いとみなされ外注されてきた職種で起きています。

IT・メディア・通信業界では、幹部の80%超が今後24か月以内の採用削減を予想しているとの調査結果も出ています。

次世代AI技術への期待

最先端企業では既に、決められた範囲内で学習・記憶・自律行動が可能な「エージェント型AI」の実証実験が始まっており、企業向けAIの次の発展段階を示唆しています。

今回の調査結果は、企業が生成AI導入において慎重かつ戦略的な取り組みが必要であることを示しており、技術の可能性と実際のビジネス成果との間に大きな溝があることを改めて浮き彫りにしています。

CoAI編集部

AI分野の専門ライター