AIに質問して答えを受け取る使い方から、仕事を任せて途中経過や承認依頼を受け取る使い方へ、重心が移りつつあります。2026年9月には、OpenAIのdotsとMetaのMuseが発表されました。Cursorの有料プランなどで使えるGrok Botと、自己ホスト型オープンソースのOpenClawも、同じ「常駐エージェント」として比べられることが増えています。
4製品とも継続して動き、外部のアプリと連携できます。大きく違うのは、誰の契約で、どのコンピューターで動き、権限の管理を誰が担うかです。この記事では、料金と利用枠、提供地域と実行環境、権限・承認の3つの表で違いを整理します。
結論:既存の契約と実行環境から絞る
4製品に順位はつけません。出力の品質は、使うモデルや設定、接続先によって変わるためです。編集部としては、次の順で候補を絞ることを勧めます。
- すでに持っている契約:ChatGPT ProかBusiness Premiumを契約しているならdotsが候補です。Cursorの個人向け有料プランかTeams、または個人向けSuperGrokを契約しているならGrok Botが候補です。dotsは対象地域内で段階的な提供がアカウントに届いていれば、Grok Botは対象プランの条件を満たしていれば、追加の契約なしで始められます。
- 使える地域:Museは、日本での提供を確認できていません。
- 承認の仕組みを誰が持つか:dots・Muse・Grok Botは、承認や自動審査の仕組みを製品側で備えています。OpenClawでは、運用者が自分で設定します。
どんな利用者に向くかは、後半の表3にまとめました。
前提:モデル名と製品名は別物
- dotsはChatGPTの中で使うエージェントで、GPT-6 Astraというモデルで動きます(Introducing dots)。
- Museはエージェントの名前です。Museを動かすMetaのモデルはMuse Sparkといいます(Meta発表)。
- Grok Botは、AIの同僚役となるBotを作って動かすアプリです。チャット製品のGrokとは別物として扱います(Grok Bot概要)。
- OpenClawは特定のLLMではなく、アシスタントを動かす基盤です。モデルは利用者が選び、各社のモデルにもローカルモデルにも接続できます(OpenClaw FAQ)。
料金と利用枠:契約料・利用枠・追加費用に分けて見る
価格は公式サイトの米ドル表示です。日本での請求額は、税、為替、購入経路によって変わることがあります。
| 製品 | 料金の位置づけ | 利用枠と追加費用 |
|---|---|---|
| dots | ChatGPT Pro(月100/200/500ドル)かBusiness Premiumのプラン料金に、最初の1体が含まれる | 本格的な作業向けの利用枠が別に含まれる。Codex・ChatGPT Workのタスクは通常の利用上限の対象 |
| Muse | 無料(上限あり)/Power 月20ドル/上位プラン 月100ドル | 有料プランには週ごとのMuse tokens枠がある(週5億/週30億) |
| Grok Bot | 単独の契約は不要。Cursor Pro(月20ドル)やTeams Standard(1人あたり月40ドル)などの対象プランに含まれる | 週ごとの枠。使い切った後は、on-demandを有効にしている場合だけ続けられる |
| OpenClaw | 本体はオープンソース。運営元のOpenClaw Foundationは有料版もホスト型サービスも提供していない | モデル(APIまたは既存契約)とサーバー・保守の費用は別。構成で変わる |
- dots:Proの価格はPro tiersに掲載されています。Business Premiumの価格は今回確認していません。本格的な作業向けの利用枠は、提供開始から1か月間は拡大されています。dotとの会話はChatGPTの利用上限に数えられません。一方、dotに頼んで動かしたCodexやChatGPT Workのタスクは、通常どおり上限の対象になります(Introducing dots)。
- Muse:無料プランにも上限があります。特典は地域やアカウントによって異なります(Muse料金ヘルプ)。Muse tokensが他社のトークンと同じ単位かは確認できていません。換算して比べないでください。
- Grok Bot:20ドルはCursor Pro契約全体の月額で、Grok Bot単体の価格ではありません(Cursor料金)。個人向けSuperGrokやX Premium+を連携しても枠は付与されますが、Cursorプランの枠とは合算されません。on-demandはTeamsでは最初から有効です。on-demandの月額上限は、実行中の作業を途中で止めるものではありません。無料トライアルは使用量クレジット型で、別に7日間の期限もあります。大きな作業1回でクレジットの大半を使うこともあります(Plans and billing)。
- OpenClaw:「有料版やホスト型サービスがない」とは、運営元のOpenClaw Foundationが提供していないという意味です(OpenClaw FAQ)。費用は接続先によって決まります。従量課金のAPIでモデルを使う構成もあれば、OpenAI Codexなど既存の定額契約を経由する構成もあります。ローカルモデルのように、外部への課金が発生しない構成も選べます(API usage and costs)。そのため、一律に従量課金とはいえません。サーバー代と保守の手間は別に見込んでください。
概念図です。金額を足し合わせる計算式ではありません。利用枠に自動で別料金がかかるという意味でもありません。
提供地域と実行環境
| 製品 | 地域・対象条件 | 実行環境 |
|---|---|---|
| dots | Pro:EEA・スイス・英国を除く地域/Business Premium:ChatGPTの対応地域全体。段階的に提供 | 専用のクラウドPCとブラウザ。本人のPCへの接続は任意で、初期設定はオフ |
| Muse | 米国・カナダで提供と案内。限定テスト中。日本での提供は未確認 | Muse Secure VM。同じVMの上でSentinelが動く |
| Grok Bot | 対象の契約が条件(使用量クレジット型の無料トライアルあり)。対象地域の一覧は未確認 | Cursorのクラウド上にある常設PC。利用者ごとに分離 |
| OpenClaw | 自分の環境に導入する。接続先ごとの条件が別途適用される | 自分のMac/Linux/VPS。モデルはローカルか外部 |
- dots:Enterprise・Edu・Healthcareでは、管理者が有効にした場合にベータ版を試せます。初期状態はオフです。日本はChatGPT対応国一覧に含まれるので、条件上は対象です。ただし提供は段階的で、アカウントに届くまで数日かかることがあります。Codexのクラウド環境でタスクを作ることもできます(ヘルプ)。企業向けのspecialist dotsは、これとは別の試験導入です。
- Muse:9月29日公開のMuse for Small Businessでは、米国・カナダで提供していると案内されました。一方、9月8日公開(9月30日更新)の導入発表には、米国で提供を開始したとあります。料金ヘルプによると、Muse本体も有料プランも限定テストの段階です。
- Grok Bot:同じ利用者のBotはすべて1台のクラウドPCを共有し、ファイルやログイン状態も共有されます。利用者どうしは分離されます(Grok Bot概要)。本人のPCでコマンドを実行するには、別の許可が必要です(承認とセキュリティ)。
- OpenClaw:接続するモデル提供元、チャットサービス、サーバー事業者の提供地域と規約は、それぞれ別に適用されます。
この記事では、日本の個人アカウントで各製品が実際に動くかどうかは確認していません。
概念図です。実際の画面や内部構造を示すものではありません。
窓口と連携
- dots:プラグインを通じて4,000以上のアプリとつながります。ChatGPT、Slack、Teamsから話しかけられます(Introducing dots)。SMSでのやり取りは、米国のProユーザーの一部に限った限定ベータです(ヘルプ)。
- Muse:専用アプリかWhatsAppで話しかけます(Meta発表)。Canva、Notion、Shopify、Stripe、QuickBooks、Slack、Metaの広告アカウントなどとつながり、独自のコネクターも追加できます(Muse for Small Business)。
- Grok Bot:コネクターがあるサービスはコネクター経由で、ないサービスは画面を操作して使います。手順を一度実演すると、Botがスキルとして保存し、定期的に実行できます。Bot同士で作業を引き継ぐこともできます(Grok Bot概要)。
- OpenClaw:Slack、Discord、Telegram、WhatsApp、Signalなどを窓口にできます。エージェントごとに使うモデルも切り替えられます。公式は、OpenClawはIDEの代わりではないとし、リポジトリ内で直接コードを書く作業にはClaude CodeやCodexを使うよう案内しています(OpenClaw FAQ)。
権限・承認と向く利用者
| 製品 | 承認・権限 | 向く利用者(編集判断) |
|---|---|---|
| dots | 共有・購入・アクセスに関わる一部の操作は、Custom Rulesで4つの動作から選ぶ。自動審査あり。パスワード変更などは本人が行う | ChatGPT・Slack・Teamsを仕事の窓口にしているPro/Business Premiumの契約者 |
| Muse | Sentinelが認めない限り外部と通信しない。メール送信や購入などの前に本人に確認する | 提供地域でSNSや店舗を運営する小規模事業者 |
| Grok Bot | Auto Review(有効にした場合)。本人のPCでの実行は初期設定が「毎回確認」 | 対象の契約があり、役割ごとに複数のBotを使い分けたい人 |
| OpenClaw | 運用者が設定する。Gateway 1つを1つの信頼境界として扱う | サーバーと認証情報を管理でき、モデルやデータの置き場所を自分で決めたい人 |
- dots:dotが自発的にバックグラウンドで調べるproactive researchでは、読み取り専用のツールしか使いません。アカウントに影響し得る操作や情報を共有する操作は、自動審査の対象です(Introducing dots)。共有・購入・アクセスに関わる一部の操作では、Custom Rulesで「確認なしで実行」「事前に依頼済みなら実行」「実行前に確認」「本人に引き渡す」の4つから動作を選べます(ヘルプ)。
- Muse:Sentinelは、Museとはシステムレベルで分離されています。これまでの操作の履歴も確認できます(Meta発表)。
- Grok Bot:Auto Reviewを有効にすると、ツールの呼び出しや画面操作が実行前に評価されます。「Ask first」(先に確認する)のルールと「自動で許可する」のルールが重なった場合は、Ask firstが優先されます。チーム管理者がAuto Reviewを強制している場合は、メンバーが変更できないチームのルールが適用されます。Botを分けても、権限の境界にはなりません(承認とセキュリティ)。Enterpriseプランには、アクセス・ネットワーク・監査の管理機能があります(Cursor料金)。
- OpenClaw:互いに信頼関係のない利用者どうしでは、Gatewayと認証情報を分ける必要があります。設定が想定からずれていないかは、
openclaw security auditで確かめられます(Security)。外部のモデル提供元やチャットサービスを設定した場合は、それらとの通信が発生します。
公式の注意書きも確認しておきます。Grok Botの公式は、Auto Reviewはモデルによる判定で、最小権限と明示的な承認の代わりではなく補完だと説明しています。dotsの公式も、誤りがあり得るため重要な作業は確認するよう求めています。どの製品を選んでも、最終的な確認は人が担います。
小さな業務で試してから決める
概念図です。各製品がこの順序や承認を必ず強制するという意味ではありません。
いきなり全面導入はせず、同じ小さな業務を候補の2製品に任せて比べるのが確実です。たとえば「週次の問い合わせメールを要約し、返信の下書きを作る。送信はしない」程度の業務が適しています。比べる観点は次の4つです。
- 下書きの品質:そのまま使える部分がどれだけあるか。
- 修正の回数:追加の指示が何回必要だったか。2回目以降は改善したか。
- 権限:読み取り専用で始められたか。送信や公開の前に確実に止まったか。
- 総費用:月額に加えて、枠を超えた分、APIやサーバーの費用、確認に使った人の時間まで含める。
4つの観点がすべて許容範囲に収まった製品から、任せる範囲を広げていくのが安全です。
確認日
2026年10月5日時点の公式情報をもとにしています。料金や提供条件は変わる可能性があります。契約前に、本文中の各公式ページで最新の内容を確認してください。