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中国のAI企業Moonshot AI(月之暗面)は2026年10月24日、新しいAIモデル「Kimi K3.1 Pro」を公開しました。あわせて、応答が2〜3倍速い「Kimi K3.1 Pro Highspeed」も出しています。どちらもチャットのKimi.comやスマートフォンのアプリ、APIで当日から使えます。海外向けのサイトKimi.comは日本からも開けます。モデルの中身にあたる重みは、11月4日までに公開する予定です。
Kimi K3.1 Proとは
Kimi K3.1 Proは、新しいK3.1シリーズの最初のモデルです。Moonshot AIは、これまでで最も高性能な、3兆パラメーター級のオープンウェイト(重みを公開する)モデルだと説明しています。一度に扱える文章の量(コンテキスト)は100万トークンです。
土台は、7月に公開した「Kimi K3」です。K3に、学習後の追加の訓練(ポストトレーニング)を大幅に増やして仕上げました。数百の分野にわたる強化学習(試行錯誤から学ぶ訓練)を同時に行えるよう、学習の仕組みを作り直したとしています。
強くなった分野
Moonshot AIは、コーディング、3Dの制作、金融の調査などで大きく性能が上がったとしています。
- コーディング:実際のコードの修正からプロジェクト全体の構築まで対応。Unity、Unreal Engine、Godotといったゲームエンジンも使いこなす
- 3D:文章やスケッチ、参考画像から形や比率を読み取り、使える3Dモデルを作る。BlenderやCADのソフトを動かすスクリプトを自分で書いて実行できる
- 金融:財務の資料の分析から投資の調査まで、一連の作業をまとめて進める
- 正確さ:事実の誤りを引き出しやすい質問を集めた社内の厳しいテストで、主張ごとの誤りの割合がK3の23.4%から8.3%に下がった
あわせて、作った3Dモデルをネット上で確認・編集し、3Dプリント用に保存できる「3D Make」をKimi.comとアプリで始めました。
他社のモデルとの比較
Moonshot AIの公表した数字では、コーディングのエージェントの力を測る「Terminal-Bench 4.0」で、K3.1 Proは65.7%でした。OpenAIのGPT-6 Astra(58.2%)を上回り、AnthropicのClaude Opus 5.5(66.4%)にわずかに届かない水準です。
画像から3DのCADデータを再現する「BenchCAD」では、ツールを使った条件で92.7%でした。こちらはClaude Opus 5.5(96.2%)やGPT-6 Astra(95.9%)に近づいたものの、まだ下回っています。いずれもMoonshot AI自身による発表で、外部の検証はこれからです。
サイバー攻撃の能力をあえて抑える
今回の発表で目を引くのが、サイバーセキュリティへの対応です。Moonshot AIによると、学習を進めるほど、ソフトウェアの弱点(脆弱性)を見つけて攻撃する力も伸びていました。原因を調べると、一般的な学習データの中にサイバー攻撃に関わる内容が含まれていたといいます。
そこで、重みを公開する版では、学習の2つの段階からサイバー攻撃に関わるデータを取り除きました。社内のテストでは、取り除かなかった場合は問題の90.5%を解けたのに対し、公開するK3.1 Proは81.0%にとどまります。Moonshot AIは、K3.1 Proの攻撃の能力は、少なくとも3か月前から公開されている他社の最先端の非公開モデルより低いとしています。
一方で、性能の高いモデルを誰でも手元で動かせるようにすることは、防御のために自分たちのコードを点検したいチームの助けになるとも説明しています。
使える場所と今後の予定
Kimi K3.1 ProとHighspeed版は、次の場所で使えます。
- チャットのKimi.comと、iOS・Android・HarmonyOSのKimiアプリ
- デスクトップアプリのKimi Work(Windows・Apple siliconのMac、バージョン3.1.0以降)
- コーディングツールのKimi Code
- Kimi API(モデル名はkimi-k3.1-proとkimi-k3.1-pro-highspeed)
APIでは、データを保存しない設定(ゼロデータ保持)を選べます。APIのドキュメントによると、K3.1 Proを使うには、最低1ドルの入金が必要です。重みを公開する際の利用条件(ライセンス)は、まだ示されていません。
また、APIの料金のページによると、前の世代のK2シリーズは、10月31日から新しく登録した利用者には提供されなくなり、12月末までにすべて終了する予定です。
CoAI編集部の視点
Kimi K3.1 Proは、中国の主要なAIモデルが、米国の最先端の非公開モデルにかなり近い性能を、重みを公開する形で出してきたことを示しています。海外向けのKimi.comやアプリで使えるので、日本の利用者もすぐに性能を確かめられます。
注目したいのは、重みを公開するにあたって、攻撃に使える能力を自ら下げたと具体的な数字で説明した点です。オープンなモデルの安全性は各社の課題になっており、一つの考え方を示した形です。ただし、性能やサイバー能力の評価はMoonshot AIの社内テストが中心です。仕事で使う場合は、データの扱いや利用規約を確かめたうえで、重みの公開と外部の評価を待って判断するのがよいでしょう。